ライトノベルは斜め上から(16)――『帰ってきた元勇者』
こんばんは、じんたねです。
前日は、緒方てい先生と夕食食べてきて、とても楽しかったです。
さて、今宵のお相手はコチラ!
解題――青少年の夢はどこへいく
1.作品概要
可愛い女の子にあんなことやこんなこと 思春期男子の夢が詰まったハーレムラブコメ!
かつて魔王を倒すため異世界に召喚された勇者ハルトは、見事魔王を倒すことに成功する。
世界を救った俺は女の子にモテモテ…そんな邪まな妄想を膨らませていたハルトだったが、すぐに元の世界へ強制送還されてしまった――!
「そんな馬鹿な!俺は異世界でハーレムを作りたかったのに!」
その純粋(?)な夢を叶えるため、元勇者ハルトは自力で異世界へ戻ることに。
しかし到着した場所は以前救ったの世界とは違うようで…?
2.ハーレムが欲しいって、どういうことだってばよ
本作品、すでに勇者として異世界で活躍し終えた人物が主人公。とある事情から、再び、異世界に戻って、そこから冒険スタートというお話です。今風にいえば2週目とでもなりそうです。
なので、主人公がチート的に強いのは、すでに織り込みずみです。そんな彼がわざわざ、どうして異世界に帰るのか。
――ハーレム欲しいから。
「奥さん。聞きました? ハーレムが欲しいんですってぇ。最近の若者はお盛んねぇ・・・」なんて声が聞こえてきそうです。勇者としての能力や名声にかこつけて、異世界にいるあらゆる種族の女の子と懇ろになりたい。そう主張して憚らない。そんな本音が作品の冒頭から、述べられています。
いいのか勇者、それでいいのか元勇者。
そしてその願望通り、あれよあれよという間に魅力的な女の子が登場し、主人公と仲良くなり、「あれ」な関係になってゆきます。1巻中にもかかわらず、そのスピードは容赦なしです。早いってばよ・・・。
女性陣の口説き方は、お世辞にもうまいとは言えませんが、本当に字義通りに「ハーレム」的な関係を結びます。直接的な描写はありませんが、そういう関係になっていることがハッキリ明記されていますし。
その情景は、おそらく青少年(男子)であれば、一度は夢見て(そして必ずや夢破れる)内容そのものなのだろうと推察します。だから快楽原則をピンポイントでついている。読めばニヤニヤできること間違いなしでしょう。ただし電車とかで読むときは気をつけてください。1巻はまだ大丈夫ですが、巻数が進むにつれて挿絵が大変なことになっていきます・・・ごくり。
3.エロスの位相
ただし、ここからが本作品のユニークなところ。描写がさっぱりしています。私がいくつかのアダルティ気味なライトノベルで目にしてきた、そういう描写が、実は少なかったりします。
実際問題、がっつりR18を書いてしまっては、出版的な事情も関係してくるので難しいとは思うのですが、それにしてもさっぱりしている。
もっと言ってしまえば、健全、なんです。KENZENの意味じゃなく、元々の意味での「健全」。「いやお前、ハーレムのどこが健全なんだよ」とお叱りを受けそうなのですが、青少年の視線から眺めるエロス、なんです。性的なものに驚きと興奮さめやらない、青少年の時代。リアリティもそこそこに、憧れや不安や期待や嫉妬や、そういったものが、コメディチックな描写の行間から、あふれてくる。
これはすごい。昔、何かのラジオ番組で大槻ケンヂさんがおっしゃっていたのですが、青少年に特有の性的なものへの志向というのは、とにかくパワーが違う、と。それがオジサンになった自分には羨ましい反面、あの報われない気持ちは二度と味わいたくない、とのことでした。
ピンとくるようなこないような。そのときは「へー」で終わっていたのですが、元勇者を読むことで、「これか!」と一気に理解してしまいました。これか、このリビドーのことかぁっ!!
4.勇者はどこからきて、どこへ行くのか
そんな本作品ですが、もちろんストーリーも着々と進んでいます。現在、5巻が発売されたばかりですが、完結にむけてじわじわと。
元勇者が、新しい勇者として再び活躍するのか、それともハーレムを作りきって、そのまま元勇者の肩書におさまるのか。私の予想では、きっとハーレムを作り切ると同時に、あらためて世界も救っちゃう、という気がしています。
だから、続きはよ!
帯の宣伝文句をまったく裏切らないクオリティの、本作品。青少年に戻りたいかたにも、おススメです。
(文責:じんたね)
そして次回予定作はコチラになります。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)
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