ライトノベルは斜め上から(47)――『銀糸の魔法式』

おこんばんは、じんたねです。

寝ても寝なくても、元気!

 

さて、本日はコチラになります!

銀糸の魔法式1 魔法使いの実習生 (講談社ラノベ文庫)

銀糸の魔法式1 魔法使いの実習生 (講談社ラノベ文庫)

 

  

 

解題――ヒロインを好きになるには

 

 

1.作品紹介

「あなたが私の保護者になればいいじゃない!」
アパートの管理を任されている秋月孝平は、ある日、銀髪碧眼の美少女・クレアと出会う。クレアは自分を【魔法使いの実習生】だと言い、半ば強引に孝平を保護者にてしまう。お嬢様育ちのクレアは、食事を用意させ、部屋を追いやり、夜間は侵入防止トラップを仕掛ける。そんな奇妙な共同生活が始まった矢先――一般人が魔法使いに襲われると言う事件を発端に、孝平は次々と魔法の絡んだ出来事に巻き込まれていく――第1回講談社ラノベチャレンジカップ≪佳作≫受賞作。

 

 

2.ヒロインを囲い込むには

本作品は、ある日突然美少女が登場して、いきなり異能魔法バトルに巻き込まれて、主人公の力が発言して、めでたく事件解決という物語になっています。私の世代にとっては王道中の王道で、読みながら、うんうんという気持ちになります。

 

このストーリーラインの、一番のネック、というか、じんたねも書きながら頭を悩ませてしまうのは、どうやってヒロインが主人公のもとに転がり込むのか、ということにあります。

 

だって、見ず知らずの他人の家、そうそうお泊まりできないでしょ?

 

できません。一泊二日の旅行じゃあるまいし、しばらく身を置くなんて恐ろしい真似は。なので、見知らぬ二人が出会って共に過ごすには、それなりの工夫が必要になってきます。

 

本作品もそうですが、その手段としては居場所を断つというものがあります。ヒロインがもともといたホームタウンが失われる(あるいは追われる)ことで帰る場所がなくなり、いやがおうにも主人公のところに押しかけなければならないというやり方です。押しかけ女房という言葉がありますけれど、あれも含蓄のある言葉です。

 

そしてそのホームタウンを追われた理由を、作品を駆動させる謎に設定する。そうすれば主人公と行動を共にする理由も手に入るというわけです。

 

 

3.主人公もまた欠けている

これもまた、同じ理由からです。いくらヒロインの故郷を奪って、主人公のもとに送り込んだとしても、当の主人公がそれを拒否ってしまえば、それまでになります。いくら美女であったとしても、やっぱり赤の他人は赤の他人。ほいほいと受け入れることはできません。

 

そこにはやはり、ヒロインを求めるべき、理由がなければいけない。

 

本作品、主人公はアパート暮らしで、かつて暮らしていた家族と離れていることになります。ヒロインはその家族を求めて来日し、そこで接点を持つという設定になっています。彼は、家族がいないからといって寂しがっていたり、あるいは心に傷を抱えていたりということはありません。が、そこは性格を理由にしています。

 

人の頼みを断れないお人好し。それが主人公を評する友人の言葉です。だからヒロインを自宅に囲って、ちょっとエッチなイベントを体験し――てるわけねえだろぉぉ!

 

・・・失礼しました。

 

性格が第一の理由というのは、説得力がありません。

「なんで騙されるん?」「そういう性格だから」というのは、理由を準備していませんと言っているようなものです。ですが

「なんで騙されるん?」「そいつが好きだった人の面影をもっていたから」だと説明になります。

 

本作品は、注意深く読まないと見落としてしまう、大事な一文を、物語の冒頭でぽんと出しています。

 

 

孝平が住んでいるこのアパートだって、昔は祖母が住んでいたものだ。

 (中略)

 昔と何一つ変わらないこの場所を――孝平は、今も愛着をもって使い続けていた。(56ページ)

 

 

つまり祖母の記憶があり、それのあるアパートから離れられない。そこに転がり込んで来た彼女が、祖母を当てにして、訪れてきた。なるほど、断れない。思い出や人への愛着は、かなりの確率でその人の行動原理を決定するからです。

 

自分が好きな人間が好きだと言ったから信用する。ベジータが味方になるロジックそのものです。あれだけ地球の人々を殺そうとしたり、宇宙で暴れまわってきたのに、仲間たちだって殺されたのに、ベジータを受け入れられたのは、孫悟空がいいっていったから。それに尽きます。

 

本作品のヒロインも、祖母との記憶を大事にしており、そのことを嬉しそう主人公に話します。そりゃ断れませんよね。

 

作品の内容についてはあまり触れられませんでしたが、本日はこれくらいで。

(文責:じんたね)

 

次回はコチラになります。

ひめとり! (Hybrid Library)

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