ライトノベルは斜め上から(48)――『ひめとり!』

こんにちは、じんたねです。

そういえば久しぶりのブログ更新になりました。これくらいのペースがいいかもしれませんね。

 

さて、本日のお題はコチラ。

ひめとり! (Hybrid Library)

ひめとり! (Hybrid Library)

 

 

 

解題――角!

 

 

1.作品概要

天涯孤独になった少年と、鬼の姫や妖怪たちのあたたかい物語。

――じいちゃんが死んだ。
俺を育ててくれた、たったひとりの大切な家族が死んでしまった――
鏡谷幸八(かがみやゆきや)は、祖父・幸蔵に育てられた。
じいちゃんとの毎日は質素で、厳しくて、でも楽しかった。
幸八が学校でいじめられて泣いて帰ってくると、じいちゃんは楽しい妖怪の話をしてくれた。
犬神、雷を扱うイタチ、そして鬼の一族……幸八はいつも、じいちゃんの話を聞くと泣き止んで、笑った。

ある日、幸八はじいちゃんから笛をもらった。
「見ろ、幸八。これはな、じいちゃんがその昔鬼を助けた恩にもらった鬼の角笛だ。
困ったときにこいつを吹いたら、鬼が飛んできて助けてくれるんだぞ」
じいちゃんが死んだとき、幸八は十五歳。
笛の話がとんでもない嘘だってことくらい、わかる。子どもをあやすための作り話だ。
それでも、幸八は。唯一の家族を失った幸八は。
一縷の望みへ縋るかのように、笛を吹くのだった。
「幸八様……ですね?」
気づけば。彼の背後に――鬼の姫が、跪いていた。 

 

 

2.落ちもの系ライトノベル

本作品は、和風落ちもの系ファンタジーといえば、正確に表現できるかもしれません。鬼の少女が降ってきて、いきなり日常生活は変化して、大ボスやっつけて、ハッピーエンドになる。サクサクっと読めるボーイミーツガールが欲しい、というかたにはおススメできる良作だと思います。媒体も電子書籍であり、アプリをDLすれば簡単に読めるようになっています。お値段もお手頃ですので、ひとまず買って損することはありません。

 

 

3.セルフ・パブリッシングの時代

作品の内容とは若干話がそれますが、一読後に思ったのが、「自分で出版できる時代なのだなぁ」というものでした。

 

技術的な意味も、もちろんあります。たった一人でも電子書籍の体裁を整えて、それを売り出すことができるからです。

 

かつて――といったらどこまで遡っていいのか分からないのですが――私が幼いころのイメージだと、紙媒体として本を出す、というのはとてもハードルの高い行為でした。出版社を通して、世に問うに値するという判断をすり合わせて、何度も構成して、各専門家の意見を踏まえて、そしてようやく本になる。

 

まあ、たぶんに懐古主義的というか、ロマンチックな見方なので、このイメージが実情を反映していたかどうかは怪しいところがありますが、それはさておいて。

 

作品の内容、という意味でも「自分で出版できる」のだと感じました。本作品がたとえば紙媒体として書店に並んでいたとしても、違和感がない。商業出版とセルフパブリッシング。こういう分け方は便宜上の意味しかありませんが、この分け方を使うとすると、その垣根は限りなくゼロに近いように思います。どちらかが上がったり下がったりしたのか。それとも地盤ごとせり上がってきたのかは分かりませんが、この二つを分けて考えることに――少なくとも本作品を読んだ印象では――意味はないと思いました。

 

これまでも、他の作者さまの多くのセルフパブリッシングの電子書籍を読んできましたが、この読後感は、いつも一緒です。もうこんな時代になったんだと、本作品を通じても、その産声とたしかな足取りを感じました。

 

 

4.だから角に触りたいんだよ、私は

こんな与太話はさておきましょう。私、本作品がとても好きです。何が好きかって、そりゃヒロインが可愛いからに決まっている。

 

ヒロインは人外のお方で、いわゆる鬼というものです。主人公の過去にけっこうえげつない感じてコミットしていたり、ストーリーを引っ掻き回したりしますが、基本的には囚われの姫です。だってラストは主人公に強奪されて結婚しますからね!

 

で、作中でデートとかしているんですが、観覧車でですね。角に触れるんですよ。彼が、彼女の。そうあのにょきっと生えている、二本のあれに。

 

「ふぇ……んんっ……やっ……はんっ」

 角は敏感な場所らしく、幸八が指を這わせるたびにミナがピクンピクンと反応する。その角を指の腹で丹念に撫でまわし、指先でつまんだり、転がしたりして、幸八はしっかりと角の感触を確かめた。角は徐々に触るごとに熱を帯びて熱くなるように思われた。

 ――ああ、うん。やっぱり本物だ。うん。(電子書籍のためページ数不明)

 

 

なぁーにが「やっぱり本物だ」だ!! きさまら、観覧車でなにじゃれあっとるんじゃぁぁ! 角が敏感なわけあるかぁぁ! 角って武器だろ!? 鹿とかよ、雄同士でガツンガツンってぶつけてるだろ!? 敏感だったら死んじゃうだろ!? だって敏感なんだよ!? 当たったら感じたらだめだよねっ!?

 

・・・・・・大変失礼しました。

 

ええと、こんな作品じゃないですよ、ほんと、ちゃんとしたボーイミーツガールなんです。ここはちょっとしたサービスシーンでだから、そのですね、じんたねがここのシーンが好きだから引用した。文句あるか。

 

俺も鬼の娘が欲しい、そう思わせるライトノベルでした。

(文責:じんたね)