ライトノベルは斜め上から(22)――『グランブルーファンタジー』

こんにちは、じんたねです。

先日は所用により、ネットに入れなったため、本日お昼の更新になります。

今日はコチラ!

 

 

解題――ノベライズによるオリジナライズ

 

 

1.作品概要

 大地が空を漂う神に見捨てられし世界で、

星の島《イスタルシア》に渡ることを夢見る少年グラン。

ある日、森で剣の修行をしていると、突然空から轟音が鳴り響いた。

なんと村が《エルステ帝国》の艦隊に砲撃されている!! 急いで戻ろうとした彼は、

蒼い髪と瞳を持つ謎の少女ルリアに出会うが、そんな二人の前に帝国兵が現れ、

その少女を引き渡せと剣を突きつけてきた!!

大人気王道ファンタジーゲーム『グランブルーファンタジー』、待望の小説化!!

 

 

2.主人公の立ち位置

物語の流れは、ほぼゲームの内容をなぞっていきます。細かいエピソードが紹介される順番や、ゲーム内では直接言及されない設定などがあります。とても読みやすく、素晴らしい文章で書かれているので、作品としての面白さがあることは間違いありません。

 

ただし、ゲームと違うのは、主人公の存在です。

 

もちろんゲームにおいて主人公は登場しますし、その意味で違いはないのですが、その透明性において意味が違う。ゲームでは、一貫して無人格です。よく指摘されるように、ゲームのプレイヤーが感情移入できるように、くせがありません。かつてシナリオの選択肢が「はい」「いいえ」しかないRPGがありましたが、基本的には同様です。

 

ですが、ライトノベル版では人格を持ちます

 

仲間の剣技に、自分の能力のなさを感じたり、自分の考えを主張したり、ヒロインとの触れ合いに頬を赤らめたり。キャラクターの一人として命を与えられています。

 

 

3.性別を変えるとはどのようなことか

ゲーム版において、もっともライトノベルとして違うのは、主人公の性別が選べ、かつ、適宜変更できる点です。

 

キャラクターのキャラとしての記号性、かつてのレトロゲームのようなやり込み要素、これらがゲーム版の魅力を支えていると私は解釈します。だから、キャラの記号性にバリエーションを持たせるために、もっと言ってしまえば、その衣装(意匠)の変化にアレンジを加えるため、男の外見と女の外見が選べるようになっています。それはさきほど述べたように、主人公の無人格性があってこそ、なせるわざです。

 

だが、ライトノベル版では、そうはいかない。

 

設定で性別を変えられるような作品をつくることは簡単ですが、ひとたび命を与えられ、人格を持ってしまったキャラクターが、任意に外見上の意味で、性別を変更することはできない。あくまでも作品の世界観のロジックにおいて性別を変えなければならない。

 

そういった制約があり、本作品では、主人公は男です。だからルリアとの触れ合いにどぎまぎしたりする描写が可能ですし、逆にいえば、ゲーム版のように女性同士の触れ合いを描写できなくもなる。

 

これはすでに、ゲーム版と袂を分かっていることを意味します。

 

本当に当たり前のことすぎて、今さら何を言っているんだとお叱りを受けそうですが、ゲームとライトノベルは、同じ世界観を共有していたとしても、別のカテゴリーに属します。別カテゴリーであるということは、どちらか一方が好きでも、どちらか他方が嫌いであったりする、ということがあり得る。だって別作品なのだから。

 

性別を選べない。言い換えれば、プレイヤーの自由にはならない。

私はひそかに、ここに勝手に期待をかけています。

 

ノベライズというのは、原作の雰囲気を味わい、別媒体としての面白味を提供するものだと思っています。それはとても素晴らしい。小説を読みながら、ゲームの雰囲気を想起できるなんて、とてもよい。

 

だが、ゲームとは違う、ノベル独自の解釈も読んでみたい。同時に、そう思っています。主人公が性別を得て、人格を与えられ、あのグランブルーファンタジーの世界で活躍する。そこにはゲームの無人格とは異なる面白さがあるはず。

 

ノベライズ版の書き手である、はせがわみやび先生の実力は折り紙付き。作品を読めばすぐに分かる。原作やイラストの世界観を壊さないままでありながら、どう主人公をまさに「ヒーロー」として活躍させてくれるのか。本当に続きを読みたいと思います。

 

・・・ヴィーラはいつごろ出てきますか?

(文責:じんたね)

 

次回作はコチラになります。

悪誉れの乙女と英雄葬の騎士 骸の船を護る竜 (ビーズログ文庫)

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