ライトノベルは斜め上から(53)『異世界にドラゴンを添えて』(ややネタバレあり)
どうもじんたねです。
大都会岡山より、こんにちは。
今回は、金髪ドラゴンハンター美少女と、なぜかイケメン自意識を持っている主人公の、異世界ラノベをご紹介ですよ。どーん!
このブログを読み終えると、
とにかく読みたくなります。
台湾をより身近に感じ、グローバルになります。
あとお腹が好きます。ほんと、要注意。
解題――える、知ってるか? 生きるってどういうことか
1.概要
――金髪少女
――異世界
――ドラゴン
表紙からあふれてくる情報で、物語の中身は伝わると思います。
なので、細かいところは省略!
2.食べようぜ、ごはん
で、本作品を彩っている特徴の一つとして、おいしそうなごはんの描写があります。
まあ、その数の多いこと多いこと。
全体の3分の1くらいは、料理と食事に費やされてますよ!(じんたね観測)
しかもうまそうなんだ、これが。
包子ありの
トリュフありの
バーベキューありの
パスタありの、
台湾料理ありの、
もう何でもあり、なのですよ。
たとえばこのシーンなんかどうですか?
焼いている中で、薄く塩を振っておいた肉が縮まり、皮の下にたっぷり仕込んでおいたトリュフのおかげで、香ばしく焼けた肉の繊維一本一本にまで、トリュフの華麗な香りが染み渡っていた。/一口噛み締めると、パリパリに焼けた皮が、火の通った肉と絶妙な組み合わせになってくれていた。それにトリュフの濃厚な香りが口一杯に広がり、そのあまりに鮮やかな味のハーモニーに、自分の下まで一緒に飲み込んでしまいそうだった。
お腹がやばい。
よだれが止まらない。
主人公が料理人であるという設定と、ヒロインが食いしん坊であるという設定が、見事にマッチングしていますから、こんなシーンがわんさと出てくる。
やばいじゃないか。
本作品、ダイエット中のかたは、絶対に深夜は見ないでください。
いいですか絶対ですよ。
表紙のイラスト、よく見てみるとお皿のうえにヒロインが乗っているんですよね。この辺の気配りもとても素晴らしい。
『異世界居酒屋のぶ』のブームや『ダンジョン飯』のヒットなど、大食いブームの歴史を踏まえたうえでなのだと思いますが、それにしても飯の描写が旨い。
3.だから異世界だっつったよね俺!?
本作人の魅力として挙げられるのは、さらにあります。異世界なのに異世界っぽくない。
「は、どういう意味だよそれ」的な台詞回しや設定も、めちゃ楽しい。
ロボット出てきますから。
脇役として、少女ロボット。
ロボットだから味覚がなくて、好対照の主人公&ヒロインと、絶妙な距離感を持っています。まさに妙味ですね!(誰が旨いこと言えといった)
・・・いや、ロボットって。
AIの時代じゃん? 異世界じゃん? どうしてロボ出てくるのさ。
でもすごいかわいいポンコツロボなんです、性格も本体も腹黒くて。
あとおっぱいも出ます。最高ですね。そのシーンのイラストもあります。必見ですね。
ロ ボ 万 歳 ! ! ! !
台詞についても、主人公独特の感性が爆発しています。
もし気に入った女の子にバラ岩塩を、こんなカッコイイエピソードと一緒にプレゼントすることができたら
これ、主人公の心の声です。
イケメンなんですよ、彼。
基本、感情移入しやすいように、若い男性向けラノベは冴えないことが多いんですが(で、本当はすごいんだぞ、とカタルシスを作りやすい)、けっこうなイケメンなんですね。
メインヒロインとのサービスシーンで、こんなことも言ってます。
俺はほんとに君にちょっかいを出そうなんてつもりはこれっぽっちも……
いわゆる風呂場をのぞいて裸でドッキリ、というシーン。
たいてい、主人公のヘタレや冷静さが描写されるんですが。
そう、ちょっかい出そうってつもりなら、風呂は覗いてもいい。
なぜならイケメンだから。
この世の真理じゃねえかよ・・・。
俗に謝る時にはおっぱいを見せろとは言うけれど
これは真理じゃありませんね、はい。
4.生きることとは、食べることと、見つけたり
飯もの異世界、というカテゴリーに分類されそうな本作品。
ですが、なんです。
そう分類すると、この作品の徹底したリアリズムを見逃してしまいます。
どういう意味かって?
順を追って説明しましょう。
まず、主人公は高校生。異世界に飛ばされる以前、料理屋の跡継ぎでした。
腕も立つし、顔もいい。そんな彼のお父さんが、こんな言葉をぶつけています。
大学になんて進学してどうするんだ? 大学を出てあれこれ学歴を切り貼りするのは、少しでも良い仕事を見付けるためだ。そこへいくとお前はもうその良い仕事ってやつが目の前に用意されているんだぞ。そんなお前が大学に何をしに行くっていうんだ?
お父さんは大学進学を、歓迎していません。
自分の家業をついで欲しい。それが「良い仕事」なんだから。
「学歴を切り貼り」という表現に、大学進学=ブランド力を高める手段、という見え方が透けています。虚学・衒学をつんでも、飯を作る腕前は上達しない。
異世界に転生した主人公は、そこではチート設定を受け継げません。
むしろ丁稚奉公、いや、奴隷といった方がいいかもしれない。
そんな立場から、泥水をすするような生活から始めます。
料理の腕前だけで、ギリギリの生活を送り続ける主人公。
彼を窮地から救うのも、やはり料理の腕。そして料理を食べてくれる登場人物。
メインヒロインはドラゴンスレイヤーとして、破格の実力を備えているのですが、ギルドランキングがどういうわけか低い。
なぜか。
退治したドラゴンを食べてしまうから。
報酬を受け取ることではなく、食べることのために、退治をする。
――異世界に来る前も、来たあとも。
――生き残るために、誰もが食材を求め、それを狩り、料理して食べる。
――それが「良い仕事」である。
つまり、生きることは、食べることだ。
本作品には、言葉の端々から、そんな徹底したリアリズムが透けて見えてきます。
そこが私にとって、何よりも美味しい、ライトノベルでした。
ごちそうさま。
・・・ありがとう、おっぱい。
(文責:じんたね)