ライトノベルは斜め上から(52)――『ライター&エディターシリーズ』

こんばんは、じんたねです。
あまり日があかないまま、ブログの第二弾をやります。
今回の作品はこちら。

解題――ラブコメの調理方法

1.あらすじ

主人公はいわゆるうだつの上がらない系20代男子。職業は駆け出しの作家(おそらくライトなものを書いている)。名前はあったかもしれないけれど、私としてはなくてもいいので知りません。ええ、男の主人公なんて匿名でいいんですよ。

 

で、ヒロインはその作家を担当する編集・内海冴子。小柄で黒のパンツスーツを着こなし、格闘技も強くて、かなり寒いオヤジギャクを言ってのけるクール・ツンデレ

本作のストーリー・ラインはとてもシンプルです。作家である主人公が、なんやかんや理由をつけて、編集の内海さんに出会って、オヤジギャクを聞いて、突っ込みを入れながら、イチャイチャして、終わり! 閉廷! ちくしょう!

 

・・・ジョークです。話を本題に戻しますが、お察しのとおり、非常にまとまったラブコメ作品です。

 

2.ラブコメ製造工場

ブコメを製造するにあたって、お約束というか、私は自分なりの鉄板を意識して書いています。挙げればキリがなさそうなので、ごく手短に、いくつかに絞ります。

 

まず、1つ目として女の子がたくさん登場すること。1人だけのものもなくはないのですが、「男の性」という理屈からか、飽きが来ないようにバリエーションがあります。そして、複数の女の子は当然ながら異なるキャラ性質を持っております。

ただ、意外に気づかれていないのですが、ラブコメで重要なのは、女の子に対する軽重がはっきりしていることです。ストーリーが展開されるにしたがって、もちろん女の子の軽重はシーソーゲームのように揺らぎます。Aもよかったけど、やっばりこんな過去とイベントのあるBが最高だよな、云々・・・。だからこそ、いろんなバリエーションの女の子が出てきても楽しめるわけです。

 

そして、もっと重要なのは、メインヒロインがNO1という軸を外さないことです(最後の最後に、この軸をずらすものもありますが、それはむしろ王道をアレンジしたバージョンだと解すべきです)。

 

いや、反論があるのは分かります。ラブコメは、いろんな女の子に浮気をしてみたり、おっぱいをあれしたり、おしりをもにょもにょしたり、もっといろんな感じに、いろんなぽにょんをぐにゅぐにゅしたり・・・とまあ、いろいろあるわけですから。ただ、それだけだとドロドロの昼ドラになってしまい、とても男の子が読む作品には仕上がらない。メインヒロインという軸が決まっており、ホームタウンに帰ってこられなくなるから。いつぞやの演歌や歌謡曲じゃないですが、男は浮気しても戻ってくる、というのが男の美学の伝統(つまりお約束)として、息づいているからですね。

 

次に大事なのが、女の子を魅力的に描くこと。
これが難しい。なにが難しいかというと、女の子とキャッキャウフフしたいと思っている人が読む限りにおいて、女の子らしい女の子であり、同時に、薄っぺらくならないというラインを描く必要があるからです。男の都合がいいだけだとつまらないけれど、かといって生々しいほど女だと「引く」ということですね。

 

もっともオーソドックスな方法論なのは、男性的趣味を女性に投影することです。

 

―大酒飲みの女の子
―オヤジギャクが大好きな女の子
―女の子がもうたまらんっていうすけべぇな女の子

 

伝わりますでしょうか。こういった女の子を用いることで、男性にとっての近寄りやすさと、そのキャラ付けを行うことができるんですね。

 

別の観点からも考えておきましょう。


魅力的に描く――間接的なエロスが大事だ、と言い換えることもできるかもしれません。魅力的な女の子というのは、主人公との距離のとりかたに微笑ましさがあることだと、断言できると思っています。「最初に」バレンタインデーの手作りチョコイベントや、「最初に」手をつなぐシーンは、だいたいのラブコメ作品において神回になると思っています。その女の子の魅力が、一番表現されるから。あのドギマギ感・距離感にキャラクター独自のものが込められていれば、もうたまらん、ってなるものです。あ、最初にってのが大事です。二回目以降は慣れが生まれますからね・・・ええ・・・。


3.昨晩はおたのしみでしたね

で、本作品。
私が意識しているお約束を、とても丁寧におさえています。
オヤジギャクを「ジョークです」とねじこんでくる小柄な内海編集。こんな人と二人三脚で小説書けたらどれだけ幸せだろう、と思わずにはおれません。

 

ほんといつもいつもいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃ・・・俺だって楽しみたいよ! なんでだよ! どうして内海編集がいないんだ!?

ジョークで――はありません。本音が漏れてしまいました。

 

あと、目立たないけれど、大変素晴らしい点として、文章も3行以上に渡って会話することもなく、背景や心理描写もサクサクと読み進められる分量に計算されていることです。全体としても短編や掌編におさまっている。スマホなどで空き時間に読むには、じつにうってつけ、というか、ピクシブという公開場所をよく考えてあると唸ってしまう。

 

ぜひ、くさくさした気分のときは、内海編集の微笑ましさを読んで、そのまま5000兆円くらい作者さんに課金されるのがよいと思います。

 

ジョークです。
(文責:じんたね)