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ライトノベルは斜め上から(40)――『暴風ガールズファイト』

こんばんは、じんたねです。

酒もコーヒーも耐性がついてしまって、眠気覚ましの方法を募集中です。

 

さて、本日のお題はコチラ!

暴風ガールズファイト (ファミ通文庫)

暴風ガールズファイト (ファミ通文庫)

 

 

 

解題――この中に11人女の子がいる

 

 

1.作品概要

マリア様が見守る聖ヴェリタス女学院。高等部に進学した麻生広海は、親友との別れによる喪失感と何ら変わり映えのしない高校生活を前にすでに鬱屈していた。ところが!そんな広海の前に吹き荒れる五十嵐千果というちびっこい嵐!巻き込まれるがままなぜか高校ラクロス日本一を目指して立ち上がることに!…っつーかラクロスって何よ?ウチにそんな部あったっけ??汗と涙とド根性!空前絶後の美少女スポ根グラフィティ、待望の試合開始。

 

 

2.マイナースポーツというテーマ

本作品は、可愛らしい表紙からもうかがえますように、マリみての女子高よろしく、お嬢様学校で繰り広げられる女子ラクロス部の青春を描いています。

 

ラクロスといえば、女子ラクロスの、あの、華のあるユニフォームを連想しますが(少なくとも私はひらひらを連想する、ひらひらスカート)、そのルールについて深く知っているひとはあまり多くありません。私もあんまりしらない。

 

本作品は、女子ラクロス部を作るところから物語が始まり、そのなかでルールを説明して、読者に提供するような構成になっています。主人公がネットで調べた、練習するなかで基本的な用語を解説する、などといった工夫があり、読みながらラクロスへの理解を深められるようになっています。

 

 

3.サッカーだとイレブンって言うけれど

で、私は、本作品を読む前に不安がありました。ラクロスは集団競技です。チームで勝負し、チームで勝利します。だいたい、スポーツを取り上げる作品は、主人公の所属するチームに感情移入するものですが、ええと、11人います

 

一人ひとりキャラ描き分けるんだよね・・・1巻ってだいたい300ページだよね・・・収まるんか・・・?

 

そう思ったんですね、はい。単純に計算して、300を11、まあ10で割りましょう。すると30ページでキャラクターを魅力的に描かなければならない。そんなこといっても、物語には、始まり、中間、終わり、という流れがあるので、単純に紙面を割くことはできない。書ききれないんじゃないのかなぁ、なんて読んでみたら。

 

・・・やられた!

 

そう思ったんですね、はい。ははぁ、こうすればよかったのか、と驚いてしまいました。

 

最初の工夫として、主人公が全面に出てこない。基本的にはすべて主人公の一人称で話は進んでいきますが、それはほとんど、物語を見渡すレンズの役目を果たしている。各キャラクター一人ひとりに焦点をあてているため、レンズ自身は透明のまま。作品内では、表裏のある、けっこう性格的には「むむ」と抵抗を感じるような設定になっているのですが、それでも表にでる言動は、きわめて控え目

 

次に、キャラの記号を徹底的に利用する。あるじゃないですか。この外見のひとだったら中身はこんなだっていうお馴染みの記号が。本作品もそれを上手く使い分け、パッと読んで、そのキャラクターをつかめるように描かれています。

 

そして、目立つキャラと目立たないキャラを、腑分けしておく基本的には、2~4名程度の主人公たちしか会話を引っ張りません。そりゃそうですよね。11人が一辺にしゃべったら――女子ラクロス部なので当然考えられるシーンですけど――誰が誰やら分からなくなってしまう。「 」が11行あって、全部主語が違うというのは、読みにくいですから。

 

それら鍵となるキャラ数名に、口数の少ない部員を配置して、11人のキャラを立たせている。・・・そうか、こう書けばいいんだ。

 

 

4.スポーツで描かれるのはスポーツではない

本作品、ラクロスへの入門書としても読めるのですが、実は物語のクライマックス、ラクロスというスポーツの駆け引きは、あまり描かれていません。そのほとんどが、キャラクターたちの心理あるいは人間関係に特化しています。ストーリー上、そんなに早くみんなは上達しない(女子ラクロス部はできたばかり)というのもあるかもしれませんが、たぶん、そっちは大きな理由ではないでしょう。

 

スポーツ観戦を想像して欲しいのですが、私たちがスポーツを見るとき、その競技のうまさや面白さは当然のこととして、違うところを見てはいませんか?

 

たとえばスポーツ紙。誰々が何をした、何を考えている、誰と結婚した、年収はいくらだ。そういったプライベートなネタはつきません。そしてそんな知識をもってスポーツ選手のプレイを見ると、これまた一味違った見え方になります。

 

つまり、スポーツを見ると言うのは、実は、そのプレイヤーを見ている、もっといえば人を見ている。上手い人がプレイするのも楽しいけれど、面白い人がプレイするともっと面白い。

 

どんな小説も、結局は、書いている人が人間を好きかどうかを読まれている――という言葉を聞いたことがありますが、そのセオリーは本作品に当てはまりますし、まさにそれが魅力となっているでしょう。

 

人を描き出すとき、どうスポーツと関係して、笑ったり泣いたり成長したりしているのか。そこがやっぱり読みたいし、そこをやっぱり読ませたい。本作品は、そこを描いてくれています。

 

スパッツもいいけれど、女子ラクロスもいい。そう思わせてくれる作品でした。

(文責:じんたね)

 

さて、次回作はコチラになります。

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

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