ライトノベルは斜め上から(31)――『りゅうおうのおしごと!』

こんばんは、じんたねです。

グランブルーファンタジーのファラ(スパッツ)がかわいすぎて、どうしよう。辛い。「ひらひらしても(スパッツだから)大丈夫っすよー」って、どうしよう、可愛いぞ。てか、スパッツって、あのスチームパンクなファンタジーに存在するのか! いいぞもっと存在して!

 

・・・ええと、本日のお題はコチラ!

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

 

 

 

解題――熱い美談を語るには

 

 

1.作品概要

玄関を開けると、JSがいた――
「やくそくどおり、弟子にしてもらいにきました!」
16歳にして将棋界の最強タイトル保持者『竜王』となった九頭竜八一の自宅に
押しかけてきたのは、小学三年生の雛鶴あい。きゅうさい。
「え? ……弟子? え?」
「……おぼえてません?」
憶えてなかったが始まってしまったJSとの同居生活。ストレートなあいの情熱に、
八一も失いかけていた熱いモノを取り戻していく――

『のうりん』の白鳥士郎最新作! 監修に関西若手棋士ユニット『西遊棋』を迎え、
最強の布陣で贈るガチ将棋押しかけ内弟子コメディ、今世紀最強の熱さでこれより対局開始!!
※電子版は文庫版と一部異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください

プロ棋士や書店員から絶賛の声、続々!!

軽快な筆致ながら、情熱漲る若き竜王女流棋士志願のひたむきな少女との交流を通じて、
勝負の厳しさそして将棋の魅力を伝える斬新な作品が誕生したことを嬉しく思う。(加藤一二三九段)

萌えまくる将棋界! 棋士がみんな変態じゃないかー!
弟子をとるなら、素直で可愛い料理のできる小学3年生かなー。
笑いながら読んじゃいました、最高です!!(竹内雄悟四段〈西遊棋〉)

ライトノベル』というフィールドでは中々扱いが難しい
「将棋」というテーマでこれほどの演出が出来るとは想像以上だった。
緊迫感あふれる対局シーンはもちろん凄いが、笑いあり、感動ありの白鳥先生らしい
エンタメ作品に仕上げているのは見事としか言いようがない。感服です!(アニメイト仙台 遠藤)

「ししょうの玉・・・すっごく固い・・・」表紙が女子小学生で1ページ目がコレ。
出版界に激震が走るほどの印刷ミスを目の当たりにしたかと勘違いしてしまう、そんなつかみは必見です!!
全くブレない白鳥士郎先生の新作、是非とも読んでみてください!!(とらのあな 商業誌バイヤー)

JS弟子は超可愛いくて悶絶必至だし、ほかのキャラクターも個性豊かで飽きがこない。
ぶっ飛んだコメディを繰り広げるかと思えば、リアル知識に裏打ちされた臨場感満載のシリアルな場面も……。
これぞ……白鳥士郎先生です!(ゲーマーズ 末原)

将棋系幼女の時代到来!? もう、最高すぎておもらしもんですよ!
白鳥先生の紡ぐ安定のギャグと熱い対局、そしてしらび先生の描く美少(幼)女たち。
是非一度、読んで欲しい1冊です!(メロンブックス 服部)
出版社からのコメント
プロ棋士や書店員から絶賛の声、続々!!

●軽快な筆致ながら、情熱漲る若き竜王女流棋士志願のひたむきな少女との交流を通じて、
勝負の厳しさそして将棋の魅力を伝える斬新な作品が誕生したことを嬉しく思う。(加藤一二三九段)

●萌えまくる将棋界! 棋士がみんな変態じゃないかー!
弟子をとるなら、素直で可愛い料理のできる小学3年生かなー。
笑いながら読んじゃいました、最高です!!(竹内雄悟四段〈西遊棋〉)

●ロリ王八一(あ、ちゃうちゃう竜王や)と天才JSあいの笑いと感動のこの物語は
将棋の面白さを感じるだけでなく思考のスピード感が凄い! そして、一気に読んでしまえる作品です。
関西が舞台で、将棋の魅力満載とあっては当然、うちのエリアではめちゃめちゃ押してます! ! (アニメイト三宮 馬郡)

●『ライトノベル』というフィールドでは中々扱いが難しい
「将棋」というテーマでこれほどの演出が出来るとは想像以上だった。
緊迫感あふれる対局シーンはもちろん凄いが、笑いあり、感動ありの白鳥先生らしい
エンタメ作品に仕上げているのは見事としか言いようがない。感服です! (アニメイト仙台 遠藤)

●「ししょうの玉・・・すっごく固い・・・」表紙が女子小学生で1ページ目がコレ。
出版界に激震が走るほどの印刷ミスを目の当たりにしたかと勘違いしてしまう、そんなつかみは必見です!!
全くブレない白鳥士郎先生の新作、是非とも読んでみてください!!(とらのあな 商業誌バイヤー)

●JS弟子は超可愛いくて悶絶必至だし、ほかのキャラクターも個性豊かで飽きがこない。
ぶっ飛んだコメディを繰り広げるかと思えば、リアル知識に裏打ちされた臨場感満載のシリアルな場面も……。
これぞ……白鳥士郎先生です! (ゲーマーズ 末原)

●将棋系幼女の時代到来!? もう、最高すぎておもらしもんですよ!
白鳥先生の紡ぐ安定のギャグと熱い対局、そしてしらび先生の描く美少(幼)女たち。
是非一度、読んで欲しい1冊です! (メロンブックス 服部)

 

 

2.職業人・専門人がテーマ

最近、普段はスポットライトの当たらない世界を題材にとりこんだライトノベル、というよりは、いつの時代もどの書物にも、そういった手法が取り入れられてきました。

有名なスポーツの類のみならず、ややマイナーなものを取り入れて「へえ、こんな世界になっているんだ」というマルコポーロ東方見聞録よろしく、元々の物語を楽しみつつ、知的好奇心を満たすことの出来るものが。

 

本作品もその例外にはもれません。

 

今でこそ将棋はニコニコ動画人工知能との対決もあって注目されてきましたが、かつてはマイナー中のマイナー。奨励会という言葉を知っている人間も少ない時代があったのですが、今では穴熊や振り飛車なんて言葉を使っても、あまりビックリされません。個人的には藤井システムが好きなんですが、もう世代代わりしてしまった感がありますね。

 

これはマイナーであればいい、というわけでもない。あまりにマイナーすぎると共感という橋渡しがとても困難になりますし、逆にメジャー過ぎたら、いまさらみんな知っていることを開陳しても面白くならない。この絶妙なところをつくセンスが必要になりますし、ドマイナーでも「俺は面白いと思ってんだよ!」という読み手を殺しにかかる腕力が必要になってきます。

 

そういう意味では、本作品、きわめてよいタイミングで時流を呼んで、しかもかなり取材されていることが伺えるディティールの凝った物語が、グイグイと読ませてきます

 

 

3.面白い作品にはわけがある

でも、それだけでライトノベルが面白くなるわけありません。それを支えるセオリーが当然、あるわけですね。

 

本作品、プロットコントロールがきれいに行き届いています。最近読んだものでは『たま高』がそうだったのですが、セクションとそこで触れるべき情報のバランスがとても読みやすくなっています。本作中に登場した、「36歩」と読み上げるだけで将棋を差しあうシーンのごとく、ページ数を読み上げるだけで、起承転結のどの部分にあたるのかを言い当てられます。おそらく書き手は、とても抑制のできるかたなのではないかと、いろいろと邪推が捗りますが、それはそれ。

 

ステレオタイプやセオリーは、決まっているだけに、退屈に思われる危険性があることは判ります。私自身、型通り、というのは苦手だったりもします。ですが、型がなければ、型破りもできず、型なしになるだけ。これは将棋でも定石がたくさん積み重ねられていて、それを知っていなければ話にならないのと同じ。

 

ライトノベルという領域に関しては、どの程度の型があるのか判じかねるところですが、それでも本作品の整ったプロットラインは、それを眺めるだけでも面白い。たしかなプロの息遣いを感じました。

 

 

4.美談はいかにしてニッチになってしまったのか、あるいはその終焉

私が本作品で注目したいことは2つあります。それは美談の語られ方と、主人公のモノローグの話し相手、これです。

 

美談から話をしましょう。

 

美談が語られにくい世の中――私はそう捉えています。

もちろん美談がないわけじゃない。ゴミ拾いに精を出したり、人知れずこっそりと何十年もプレゼントを送り続けたり、美談ならむしろそこら中に転がっている。

 

でも、これ、消費されるための美談なんじゃないかって。美談に触れて「ああすごい、いいなあ、こんな素敵な人がいる。心が洗われる」とはなるものの、じゃあ、明日からキミ、それ頑張ろうね、とは決してならない。「ああ面白かった」と「泣ける映画」(この宣伝文句ほど品がないものもないと思いますが)を見て終わることに似ています。それを逆に、「キレイゴト」だと嘲笑して、距離を取ろうとする動きも、同時に成立しています。

 

どちらにしても真正面から美談が語られることを歓迎してはいません消費して無害化して他人事にするか、嘲笑して揶揄して貶めるか、になりがちだからです。

 

だから美談は語られた途端、消費の対象になってしまう。こんななか、消費されない美談を語ることは難しく、美談が語られた直後から、消え去る運命にある。

 

ですが、場所を創りだして、美談を語る技術がある。そう、物語を紡ぐことです。最初からフィクションであると予防線を張れば、物語を消費させるなかで、美談が消費されることを回避できる可能性がある。わざと読ませて、本音を潜ませる、とでもいえばいいのでしょうか。しかもそのフィクションの設定が、読者に馴染みが薄ければ薄いほど、隠しやすくなります。

 

本作品、棋界を扱っています。

 

将棋が知られるようになったとはいえ、現代の徒弟制よろしく、奨励会のシステムを知悉している人間は少ない。しかも、棋士という人間の生活については、なおさら不明です。羽生善治は凄い人だ、という共通認識はあっても、彼がどのようなライフスタイルを送ってきて、今にいたっているのかは見えない部分がたくさんある。

 

だから、棋界を扱っている本作品は、美談を語るに適切なんです

 

実際、棋界を知っている人であれば「ああ、あの話か」とすでに消費されていしまっているが、そうではない人には「ええ、そうなの」という逸話が、たくさん散りばめられています。

 

たかがボードゲーム、されどボードゲーム。人生がゲームであるという、主と副の逆転した格言が多く引用されています

 

それが、先ほどの述べたように美談を消費したり揶揄したりすることを回避させ、読者にそのまま届けられている。真剣な勝負の場面が、ほとんど棋譜もなく展開され、読み手を引きずり込む。強くなるために恋人も友人も必要ない。そんなセリフがリアリティを持って迫ってくる。

棋譜を並べるだけなら、将棋しらないひとは面白くないし、新聞の将棋コーナーとあまり変わらなくなっちゃうので、そりゃまあ読み物としてはそうしかないんですが・・・そういうラノベ的事情を加味しても、という話)

 

それは美談を美談としてそのまま語る技術――すなわち、美談の場所を、棋界という半フィクションに溶け込ませているからではないかと思っています。(本当に友達がいなかったり、朝から晩まで将棋ばっかりしていても強くなるとは限らず、また、女性のナンパばっかりしながら棋聖タイトル取るような人もいます)

 

 

4.「今、誰に説明したの?」

あと1つ。主人公の距離をとった地の文が、本作品の、魅力を引き立てています。

 

 姉弟子の実力をもってすれば全冠制覇も夢じゃないんだろうが、制度上それは不可能になっている。理由はそのうち語ります。お楽しみに。(22頁)

 

ここ。最初読んだ時、えらいびっくりしました。「今、誰に説明したの?」って思ったから。その予言通り、ちゃーんと物語の終盤で、このわずかな伏線は回収されるのですが、「理由はそのうち語ります」というのはここで理由をキープして黙っているという自意識が主人公にはあるからで、かつ「お楽しみに」というのは、誰の楽しみかといえば、それはもちろん読者のことです。

 

ここまで分かりやすいものは、その後、見られなくなりますが、ことあるごとに展開されるコミカルパートの会話は、そこに没入しつつも一歩引いてみている自分、という構図をなぞり続けます。

 

その適切な距離感というべきか。没入を避ける冷静なツッコミというべきか。それが作品に、得も言われぬ妙味をもたらしています。ぶっちゃけ、羨ましい。

  

この距離感と美談とが、不思議なコラボレーションを発揮しているのが、本作品。手に取ってまったく損はさせないと断言できる作品です。一読されてみてはいかがでしょうか。

(文責:じんたね)

 

次回作は、ツガワ先生!

剣と魔法の世界ですが、俺の機械兵器は今日も無敵です。 (HJ文庫)

剣と魔法の世界ですが、俺の機械兵器は今日も無敵です。 (HJ文庫)